フレネル近似、フラウンホーファー近似

光や音の回折現象において用いるフレネル近似、フラウンホーファー近似について、それらがどういったものなのか簡単に理解できる資料が少なかったのでまとめてみました。今回は回折現象のものよりも近似の部分に注目した資料になります。誤植等がありましたらご連絡ください。

前提

$$(1+\alpha)^{m}$$のマクローリン展開

\begin{align}(1+\alpha)=1+\alpha x + \frac{\alpha(\alpha-1)}{2!}x^2+\cdots\end{align}

 

本題

f:id:koroyu:20191129191656j:plain

ホイヘンスの原理により微小な隙間である点Pで新たに二次元波ができ、これをA面で観測するとする。この波のA面への投影成分は

\begin{align}
U(x_{t},y_{t},z_{t})=\frac{j}{\lambda}\frac{e^{-jk_{0}r}}{r}cos\theta U(x_{s},y_{s},0)
\end{align}

となる。

ここの導出については参考資料をご覧ください。

次に、A面(z_{t}=z)において点Pからでる2次元波の重ね合わせを考えると、

\begin{align}
U(x_{t},y_{t},z)=\frac{j}{\lambda} \iint_A U(x_{s},y_{s},0) \frac{e^{-jk_{0}r}}{r}cos\theta dx_{s} dy_{s}
\end{align}

この式について3点気になる。 

  1.  cos\thetaの値
  2.  \frac{1}{r}の値
  3.  e^{r}の値

 cos\thetaの値

PQがz軸に対して平行に近いと、

$$cos\theta\approx 1$$

が成り立つ。

これを近軸近似という。

 \frac{1}{r}の値 

近軸近似を考えると、1/rと1/zの値はほぼ一致することがわかる。

$$\frac{1}{r}\approx \frac{1}{z}$$

しかし、この値は光や音波、電磁波などではeの指数関数内ではこの近似をしてはならない。

ここまでで一旦式を簡潔にすると

$$U(x_{t},y_{t},z)=\frac{j}{\lambda} \iint_A U(x_{s},y_{s},0) \frac{e^{-jk_{0}r}}{z} dx_{s} dy_{s}$$

となる。

e^rの値

eの指数関数内でのrの近似で登場するのがこれからのべるフレネル近似(Fresnel approximation )とフラウンホーファー近似(Fraunhofer approximation)である。

$$r=\sqrt{(x_{t}-x_{s})^2+(y_{t}-y_{s})^2+z^2}$$

この式の平方根の中からzを取り出し、$$(1+\alpha)^{m}$$のマクローリン展開を用いて式変形を行う。

$$\begin{eqnarray}r&=&z\left\{1+\frac{(x_{t}-x_{s})^2-(y_{t}-y_{s})^2}{2z^2}\right\}^{1/2}\\&=&z+\frac{(x_{t}-x_{s})^2-(y_{t}-y_{s})^2}{2z}\\&=&z+\frac{x_{t}^2-y_{t}^2}{2z}-\frac{x_{t}x_{s}+y_{t}y_{s}}{z}+\frac{x_{s}^2-y_{s}^2}{2z}+\cdots\end{eqnarray}$$

となる。

ここで気になるのは$$\frac{x_{s}^2-y_{s}^2}{2z}$$この項を0に近似して良いかである。

この点は常にz軸付近にある訳ではない。z軸から少し離れている場合もある。(ただしcosの近似は成り立つものとして考える)

この項を0として強く近似したものがフラウンホーファー近似、0としない弱い近似がフレネル近似である。 

ここでフレネル近似によるフレネル回折の式を求めていく。

まず

$$e^{r}=e^{z}e^{\frac{x_{t}^2-y_{t}^2}{2z}}e^{-\frac{x_{t}x_{s}+y_{t}y_{s}}{z}}e^{\frac{x_{s}^2-y_{s}^2}{2z}}$$

であり、積分変数が微小な穴での座標$$x_{s},y_{s}$$であるから、それを含む変数は積分の外に出せないことに注意して、上のUの式は

$$U(x_{t},y_{t},z)=\frac{je^{jk_{0}z}}{\lambda z}e^{-jk_{0}\frac{x_{t}^2+y_{t}^2}{z}}\iint_A U(x_{s},y_{s},0)e^{jk_{0}\frac{x_{t}x_{s}+y_{t}y_{s}}{z}}e^{-jk_{0}\frac{x_{s}^2+y_{s}^2}{z}}dx_{s}dy_{s}$$

となる。

参考

https://www.osc-japan.com/wp-content/uploads/2013/03/ODN27.pdf

http://www.hikari.scphys.kyoto-u.ac.jp/jp/index.php?plugin=attach&refer=%E9%9B%BB%E7%A3%81%E6%B0%97%E5%AD%A64%202012%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88&openfile=4th.pdf